7人のマーキュリー宇宙飛行士たちは、それぞれマーキュリー号の開発において特別な責任を負っていた。例えば、アラン・シェパードはカプセルの着陸と脱出時の宇宙飛行士の回収を、ジョン・グレンはコックピットとフライトシミュレーターの最適化を担当した。また、スコット・カーペンターはカプセルに搭載する航法装置の責任者であり、宇宙飛行士が着用する時計も彼の領域であった。
このとき、NASAはマーキュリー計画で着用する時計を1本も決めておらず、宇宙飛行士に時計を支給することもなかった。そのため、宇宙飛行士は自分で時計を選び、調達することになる。カーペンターは、宇宙飛行士が身につける時計の選択、少なくとも時計の推薦を自分が行うことに喜びを感じていたという。
カーペンターの娘であるクリス・ストーバー(Kris Stoever)氏によると、父親は間違いなく "時計好き "だったという。彼は高校卒業後、海軍に入隊するとき、父親にどんな時計が欲しいかを手紙に書いたという。「航空士官候補生のなかで自分を目立たせるような一番カッコいい時計が欲しいということでした。また、見た目だけでなく、彼は時計がパイロットにとって重要な道具であり、多くの危機的状況で彼らを助けてくれると信じていました」
カーペンターは、訓練と、どんな状況にも対応できるようにすることに力を注いでいた。「重要なのは、常に準備をしておくことです」とストーバー氏は説明する。「災害のための訓練、そしてさらに訓練を重ね、緊急時に必要なあらゆる装備を揃えておくことです。時計、計算尺、ナイフ、ドライバー。それらが救命ボートになるわけです。そして、装備よりも重要なのは、任務を遂行するための体力と、問題を解決するための精神力でした」
ストーバー氏は、スコット・カーペンターが腕時計を宇宙飛行士にとって特に重要な装備だと考えていたことを示唆している。「彼らは、失敗のリスクに備えていました。例えばアフリカやボルネオに着陸するときなどです。もし、ボルネオ島に着陸したら、時計と計算尺が生き残るために重要な役割を果たすかもしれない。もし、星や星座を見つけられたら - 父はそれができました - 時計と計算尺が命を救ってくれたかもしれませんね」。ストーバー氏は、彼女の父親が厳しい訓練から得た大きな自信と、恐怖心を克服する心に誇りを持っていたという。
カーペンターは当初から、宇宙飛行士が使用するのに最適な時計のビジョンを持っていた。何年も前のインタビューで、スコット・カーペンターは、ブライトリングの ナビタイマーを初めて知ったきっかけをこう語っている。「マーキュリー計画の初期、無人のアトラス打ち上げのために、私はオーストラリアのパースに行き、RAAF(王立オーストラリア空軍)と飛行しました。そのとき、私はブライトリングのナビタイマーを見たのです。それらはRAAFのパイロットのためのものでしたが、ナビタイマーは、アメリカの宇宙飛行士が持つべきものだと思いました」。
カーペンターは、ナビタイマーにみっつの改良を加えることで、宇宙飛行士のための理想的な計器になると考えた。
【関連記事】:移り変わる空の色をイメージした、柔らかな風合いのバッグ