ジャガー・ルクルト メモボックスを1週間レビュー
オリジナルの自動巻きアラーム腕時計を着けて大西洋横断の旅に出た。この特異な機能をもつ腕時計が、大きな楽しみを与えてくれることを証明する旅だ。たとえiPhoneをバックアップにしていたとしても。
今では、A Week On The Wristのレビューはもうお馴染みだろう。このレビューで我々は、腕時計の歴史や技術的詳細について紹介する一方で、腕時計を実際に着用してみてどうだったかについても、解説してきた。だが、皆さんが関心を抱く対象が現代の腕時計だけではないことを我々は承知している。これは将来にわたって何度も展開する、古典的なヴィンテージウォッチを考察するA Week On The Wristレビューの最初の回となる。私は手始めに、オリジナルの自動巻きアラームウォッチ、ジャガー・ルクルトのメモボックスと共に、大西洋横断の旅に出かけることにした。
機械式アラーム
機械式アラームは、過小評価されている機能だ。現在、我々の多くは、さまざまな目的で数多くのアラームを設定して、カレンダーのイベントを通知したり、一度にいくつものスケジュールを追跡できるような、さまざまなメーカーのスマートフォンをもっている。そのため、純粋な実用性という意味で言えば、機械式アラームは少々時代遅れになっている。とはいえ、機械式アラームの付きの腕時計には、全く別の魅力があるのだ。
メモボックスのアラーム設定用の矢印。
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アラームウォッチの歴史は、数千年前にまで遡る。これは決して誇張ではない。古代ギリシャでは、水時計に小石を落としたり、ゴングを鳴らすなど、その他にもさまざまな音を奏でる仕掛けになっていたという。今日、我々が知っているアラームは、実際には比較的シンプルな機構になっている。まず香箱が巻かれ、エネルギーを貯える。特定の時刻になると、そのエネルギーが解放され、歯車を回してハンマーを前後に動かし、共鳴室やゴングまたはベルが反響して音が出る仕掛けになっているのだ。実に単純明快ではないだろうか?
歴代の米大統領が愛用したヴァルカンのクリケット。
ベッドサイドのテーブルで巻いておき、設定した時刻に起こしてくれるような機械式アラームクロックは、1876年、発明家のセス・E・トーマスが米国で特許を取得したものだ。それより1世紀前の1787年にこれと似た時計が発明されていたが、それはいつ巻いても特定の時刻に鳴るように作られており、使用者が違う時刻を設定することはできなかった。トーマスの置時計はすぐに、米国の家庭の中心的な時計となった。アラーム付き置時計として、現代の我々のほとんどが即座に認識し得るものの最初の置時計である。
このアラーム機能が組み込まれた腕時計の登場までには、トーマスの時計からさらに数十年の年月を要した。その腕時計とは、今では伝説的となっているヴァルカンのクリケットである。1947年に発売されたクリケットは、アラーム機能を搭載した初の腕時計となった。現実的に難しかった部分とは、そのアラームが、単なる珍しい機能ということではなく、装着者が実際に目を覚ますほど十分に大きな音でアラームを鳴らすように製造することだった。ヴァルカンは、二重の裏蓋を使用し、時計があまり嵩張り過ぎないようにしながら、アラームを反響させることができるような仕組みにした。後にクリケットコレクションは水中でも機能するアラームウォッチへと拡大した。
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